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2007.02.01
社会・地域2007年研究活動支援
日本歯科放射線学会 野井倉武憲賞 受賞
日本歯科大学生命歯学部 歯科放射線学講座
河合 泰輔 先生
平成19年5月10~12日に開催されました特定非営利活動法人日本歯科放射線学会第48回学術大会において、
日本歯科大学生命歯学部放射線学講座の河合泰輔先生が、野井倉武憲賞を受賞されましたので、お話をお伺い致しました。
早速ですが、今回の研究に至った経緯を教えていただけますでしょうか?
今回の研究は下顎骨の舌側とそれに続く管の出現形式について、医科用CTを用いた患者画像による検討、および解剖学実習用献体による検討の続きとして、日本人の乾燥頭蓋骨標本を用いて歯科用CT画像でさらに詳細に検討したものです。
この研究の経緯としては、私が大学病院の放射線外来で、患者の医科用CTを撮像しているときに、次々と送られていく複数の水平断画像の中の1、2枚に下顎骨舌側の皮質骨に切れ目があることに気付き、「これはなんだ?疾患か?」ということが始まりでした。
これは、正中と犬歯・小臼歯付近の舌側に出る傾向がある感じだ・・・というところまで、日々のCT撮影の時点で気付いておりましたので、さらに調べようと国内外の論文を探しましたが、あまり目立った論文がありませんでした。(その後、すぐにEuropeで出始めましたが・・・)そこで、解剖の先生方にご協力していただきながら、さらに詳細な画像を見ることができる歯科用CT「PSR9000N」(当社朝日レントゲン製)を用いて、本格的な研究を進めていきました。
この研究は、日々の臨床の現場におけるちょっとした疑問に端を発したということに意義があると私自身は感じています。
Q2 研究期間としてはどのくらいだったのでしょうか?
医科用CTの画像で気付き、歯科用CTを用いて本格的に研究を開始してから、今回の発表にいたるまでとしては約3年間です。
結果的には、その切れ目が「ある」という確かな事実がわかれば、研究は終わると思っていました。
しかし、その部分から内部に続く管には血管が走行しており、その方向が傾向として分析できれば、
インプラント治療時に「画像診断時に気をつけておくべき項目の一つ」になるであろうと考えるに至りました。
今回の研究発表の結論としては、下顎骨の正中部分には、正中線上のみならず、左右に少しずれた部分にも下側孔は存在しており、それらに続く下顎骨内の管は正中の中心部に向かい走行するということが明らかになりました。
この結果から、インプラントを中心とした外科処置に際しては、事前の画像診断で十分に確認することで、
術中や術後の偶発症などの不快症状を減少させることができると確信することができました。
まずは画像の解像度が良いということが最大の特徴ですね。また、今回の研究における撮影領域のモードとして、DentalモードO40×41mmは最適であったと思っています。また装置としては、連続撮影の機能のおかげで効率よく作業を進めることができましたね。
最近は、以前に一度行われていた研究でも、最新の診断装置を用いて再度研究し直そうという傾向が顕著に見られるようになってきました。私の場合も同様で、歯科用CTという最先端の装置を使用することによって、今まで曖昧であったものがはっきり見えるようになってきた訳です。今回の研究において、歯科用CTの存在は大きく、協力していただいた朝日レントゲンの皆様には感謝しております。
将来的な希望として言わせていただけるのであれば、歯科用のCT装置全体に言えることですが、濃度(CT値など)の基準が欲しいなと思いますね。やはり定量評価(管などの太さの計測など)をするためには基準が必要となりますので。
Q4 研究において忘れられないエピソードなどはありましたか?
研究においての直接的なエピソードではありませんが、実は大学院生の時に、スコットランドのグラスゴーで開催された国際学会に初めて参加しました。
その時に、ポスター発表の証明書をいただいた方というのが、今回の受賞させていただいた賞の名称となっている野井倉武憲先生でした。あれから6年程が経ちましたが、今回の受賞は私にとってそういう意味でも感慨深いものがありましたね。
Q5 それでは最後に今後の展望がありましたら教えてください?
実は、今回の研究で行った正中部分よりも、犬歯・小臼歯の舌側孔のほうに大きな臨床的意義を見出しています。
というのも、正中というのは、下顎が結合する部分であり、非常に固い部分なのですね。この領域において、血管を含む管の走行についてある程度明らかになりましたが、インプラントを正中線上に埋入することは考えにくいのですよ。
これらの下顎骨における舌側孔を事前の画像検査の段階で確認しておくことで、さらに偶発症の可能性を減らし、さらに安全な治療を可能にできると考えられます。そして、空間分解能の優れた歯科用CTなどの普及により、今回検討した舌側孔の存在およびその他の顎骨における潜在的な疾患の有無など、事前にレシピエントの状態を十分に検討することが可能になりました。
このことにより、将来的にもインプラント治療はさらに安全になるとともに、術前の画像検査の選択・診断の重要性もさらに増してくるものと考えております。
本日は、貴重なお話をありがとうございました。
また、重ねて受賞おめでとうございました。